あなたも「内職率37.5%」の一員ですか?会議中の内職問題
会議中の内職は、オンライン会議の増加によってあなたが思っている以上に広がっています。なんと37.5%のビジネスパーソンが内職しているとの調査結果も。このブログでは、オフライン会議とオンライン会議の内職率の違い、具体的な内職行為の実例、そしてそれが生産性やビジネスパフォーマンスにどのように影響するのかを掘り下げます。内職は悪か、それともマルチタスクとしての有用性があるのか?そしてその解決策は?
目次
会議中の内職率は37.5%—オンライン会議の増加で高まる「内職」への問題意識
内職を行うビジネスパーソンの現状
オンライン会議が取り入れられるようになった昨今、会議の進行中に別の業務を行っているビジネスパーソンが増えているのではないかと懸念されています。
実際に、リスクモンスター株式会社による「オンライン社内会議における内職の実態」調査では、アンケート対象者全体の37.5%が「オンライン社内会議中に内職をしている」と回答しました。
また、会議回数が多いほど「内職している」が多い傾向にあり、1か月の会議回数が5回以上になると、内職率は50%を超えることが明らかとなっています。
オフライン会議とオンライン会議の内職率比較
オンライン会議とオフライン会議では、内職を行う可能性に大きな違いがあります。
顔を突き合わせて行うオフライン会議だからといって、内職をする従業員がいないわけではありません。しかし一般的には、参加者の様子がお互いに五官で感得できるため相互監視が働きやすく、また会議中にノートPCやモバイル端末を注視したりキーボードを操作し続けている状態自体が不自然であるために、内職をしたくともできない、という実情があります。
一方オンライン環境では、他の参加者が自分の行動を直接見ることができないという安心感から、内職をしやすい環境と言えます。さらに、カメラオフをしたままオンライン会議に参加することを明確に禁止していない企業風土の場合、内職実施率はさらに高まるはずです。
リスクモンスター調査では、オンライン会議の場合は内職率35.7%だったのに対し、オフライン会議の内職率は14.6%と低い結果が出ており、内職率には実に2.5倍強もの差が認められています。
内職行為の実例
会議中に行われる内職としては、具体的にはどのようなものがあるでしょうか。以下リストアップをしてみます。
- Eメールのチェック・返信: メールはビジネスの中心であり、会議中でも重要な通知が来る可能性があるため、頻繁にチェックする人が多いです。
- チャットツールでのコミュニケーション: Slackなどのビジネスチャットで他の業務に関するコミュニケーションを取る人もいます。
- SNSのチェック: 情報収集目的で、TwitterなどのSNSを閲覧している人は少なくありません。
- 業務関連のリサーチ: インターネットでの情報検索や市場調査などを行うこともあります。
- 他の会議の準備: 同日中に他の会議が予定されている場合、その準備を進めることがあります。
- 報告書・資料作成: 会議中に報告書やプレゼンテーション資料の作成を進めることもあります。
- 業務管理・スケジュール調整: 仕事の進行状況の確認や、次のタスクのスケジューリングを行うこともあります。
- オンライン研修・学習: オンライン学習プラットフォームの受講や宿題となっている確認テストを解く人もいます。
- 営業リストの更新: 会議中に営業リストの更新や新たなリードの追加等を行う場合もあります。
- プログラミングやコーディング: IT関連の仕事をしている人の中には、会議中にコードを書く人もいます。
内職行為が会議の生産性に与える影響
ミーティングの効率性の問題
会議中に参加者が内職を行うと、その会議の効率性は著しく低下します。
会議の目的は参加者が情報を共有し、協議し、重要な決定を下すことです。しかし、参加者が他の業務に注意を向けていると、会議の目的が果たせません。その結果、会議は長引き、その価値は薄れてしまうことがあります。
また、会議で討議された内容を完全に理解しなかったために、後に混乱や誤解が生じる可能性もあります。
コミュニケーションの欠如
内職は、それをしている本人にとっては「効率的」であっても、会議の成果とチーム内のコミュニケーションの質を低下させます。
全員が会議に集中していると、新たなアイデアが生まれたり、問題が解決したりすることがあります。しかし、一部の参加者が他のタスクに注意を向けていると、そのような有意義なインタラクションが起こりにくくなります。
また、せっかく関係当事者を会議で集めているにもかかわらず、本来ならその中で消化すべき質疑応答の機会を逃す可能性もあります。
ビジネスパフォーマンスへの影響
内職行為はビジネス全体のパフォーマンスにも影響を及ぼします。
一部の従業員が会議中に他の業務に注意を向けると、会議の結果が不十分になり、組織全体の効率性と生産性が低下する可能性があります。
特に、会議で重要な決定が下された場合や、新たなプロジェクトが開始された場合、全員が同じ理解を持って取り組むことが重要ですが、内職が横行すればそれができなくなります。そのため、内職行為はビジネスの成功に重大な障害となり得ます。
内職は悪か?マルチタスクによって全体の生産性を最大化しようとする立場からの反論
マルチタスクの効率性に関する米国心理学会の研究
上記の調査や検討は「内職は悪」という前提に立っていますが、必ずしも悪ではないという意見もあります。それは本当でしょうか。
マルチタスクが生産性を向上させ、業務の柔軟性を強化するという考えがあります。タスクが異なる認知的な要求を持つ場合、つまり、視覚的なタスクと聴覚的なタスクを組み合わせるなどの場合、マルチタスクは一定程度有効である、という意見です。
しかし、全てのタスクがマルチタスクに適しているわけではありません。同じ認知的要求を持つタスクを同時に行うと、一般的にパフォーマンスは下がります。
米国心理学会に提出された論文”Executive control of cognitive processes in task switching.”では、タスク切替によって発生する生産性の低下度合いを様々な実験によって検証しています。実験方法によっては、40〜50%を超えるスイッチングコストが認められたケースもあったとされています。
内職が生産性に与えるプラスの影響
内職が生産性に与えるプラスの影響があるとすれば、どのようなものが考えられるでしょうか。
まず、内職によって個々のタスクの完了にかかる時間が短縮され、全体的な生産性が向上する可能性があります。また、マルチタスクは参加者の注意力を維持するのに役立つ場合があります。
たとえば、会議の議題が自分の業務と直接関係がない場合でも、マルチタスクによって注意力を保ちながら会議に参加することは、不可能ではありません。
マルチタスクと会議の両立:成功するための戦略
マルチタスクと会議を両立させるには、まず、優先度の高いタスクを特定します。全てのタスクが同等の優先度を持つわけではないので、どのタスクに集中するかを明確にします。
次に、タスクのスイッチングを最小限に抑えます。先ほど紹介した実験結果にもある通り、タスクの切り替えは認知的なコストがかかるため、一度に一つのタスクに集中することが推奨されます。
最後に、会議中に必要な注意力を確保します。必要な情報を把握し、必要なときに適切なフィードバックを提供することが、会議の生産性を保つために重要です。
会議中における内職問題の解決策
働き方改革の視点から
内職問題の解決は、働き方改革の一部と考えることができます。まず、労働時間の効率化を目指し、必要な会議だけを行い、それ以外の時間は個々の作業に集中できる環境を作ることが重要です。
また、フレキシブルな勤務体制を導入し、従業員が自分のペースで最良のパフォーマンスを発揮できる環境を整備する取り組みの中で、無駄な会議を減らすことで従業員はより価値のある業務に時間を割くことができます。
内職を防ぐ会議の進行方法
内職を防ぐためには、会議が参加者全員にとって価値のあるものであることを確保することが重要です。
会議の目的とアジェンダを明確にし、必要な人だけが参加するようにすることで、無駄な時間を避けることができます。また、会議中に参加者に積極的に意見を求めることで、関与感を高めることも可能です。さらに、会議時間を短くし、必要なことだけを話し合うようにすることも有効です。
オンライン会議の場合は、カメラオフを禁止し、進行役や他の参加者から視覚的に会議への集中度合いを確かめやすくするという手段も、検討の余地があるでしょう。
チームとしての対策と組織文化の形成
内職問題の解決は、個々の行動の改善だけでなく、チーム全体、あるいは組織全体の文化の変革を必要とします。
一人一人が会議の価値を理解し、積極的に参加することで、より生産的な議論を生み出すことができます。このためには、リーダーシップが重要です。
リーダーが会議の効果的な進行方法を示し、全員が会議に全力を尽くすことの価値を強調することで、チーム全体が会議の生産性を向上させることにコミットする文化を作ることができます。