カイギの課題再確認

議事録作成の課題TOP10 会議議事録作成の難しさとその克服法

議事録作成は、ビジネスパーソンにとって避けては通れない重要な業務です。しかし、多くの人がその難しさに頭を抱えています。再現力、取捨選択能力、事務処理能力といった必要なスキルから、時間制約、特有の言葉の理解、プライバシー問題まで、幅広い課題が存在します。本記事では、議事録作成の課題TOP10をピックアップし、その解決策を提供します。議事録作成のスキルを磨くことで、会議の生産性を向上させ、組織全体の効率化に貢献することが可能です。

議事録作成の課題TOP10 会議議事録作成の難しさとその克服法

会議における議事録作成の難しさ

議事録とは?議事録作成の重要性

会議の議事録とは、会議の流れ、議論の内容、取り決めたことなどを正確に記録したものです。参加者が会議の内容を振り返るためのツールであり、欠席者が会議で何が話されたかを理解するための重要なドキュメントとなります。

会議は、ビジネスの世界でアイデアを共有し、問題を解決し、進捗を確認するための主要なプラットフォームとなっています。リモート/テレワークが当たり前の現代においても、会議の必要性は増えこそすれ、無くなる様子はありません。

こうした会議の議論や決定事項を議事録に適切に記録することは極めて重要であるにもかかわらず、決して容易な作業でもありません。

議事録作成に負担感を強く感じるビジネスパーソンは67.2%

キヤノンマーケティングジャパンが2023年2月21日に発表した「議事録/発言録の作成業務」調査によれば、議事録の作成業務に負担を感じているビジネスパーソンは、回答者の67.2%を占めています(参考記事:議事録の作成業務における現場の負担とDXの浸透を調査)。

この負担感は、オンライン会議の急増によりますます大きくなっています。議事録の作成にかける1週間あたりの平均時間は6.13時間、年間換算で319.6時間にものぼります。これは8時間労働を基準にすると、約40日分の労働時間を議事録作成に費やしていることを意味します。

テレワークにより移動時間の削減・資料のデジタル化などが進んだ一方で、オンライン会議の議事録の作成においてはデジタル化が進んでおらず、業務効率化ニーズは高まる一方と言えます。

議事録の作成に負担を感じているビジネスパーソンは67%
議事録の作成に負担を感じているビジネスパーソンは67%(キヤノンマーケティングジャパン調査より)

議事録の作成は何が難しいのか—求められるスキル・能力

議事録作成は日々の身近な業務でありながら、どうしてここまで難しいと考えられているのでしょうか?

それは、単に文章を作成するというスキル・能力にとどまらないからだと考えられます。議事録作成に必要な能力を言語化すると、以下3点に集約されます。

(1)再現能力

議事録作成とは、ただ情報を記録するだけでなく、情報の解釈、整理、そして正確な再現を必要とする点が特徴です。

会議では多くの意見やアイデアが飛び交いますが、それらすべてを一つ一つ記録することは非現実的であるだけでなく、議事録の読み手にとって情報過多にもなりがちです。そのため、議事録作成者は必要な情報だけを抽出し、再現することが求められます。

(2)取捨選択能力

全ての議論やアイデアが同等に重要であるわけではなく、議事録作成者は会議での重要なポイントや決定事項を把握し、それを明確に記録する責任を負っています。

1で述べた再現能力ばかりに重点を置くと、「動画で撮影したものを見直すのが一番正解」となってしまいますが、それではビジネスは回りません。それゆえ、要点を文字で表現する能力が必要とされるわけですが、これは注意力、理解力、そして瞬時の判断力を要求する作業であり、その難しさは計り知れません。

(3)事務処理能力

議事録の作成と価値あるタイミングでの共有を実現する業務は、時間との戦いでもあります。

特に、議事録作成者が会議に参加しつつリアルタイムで議事録を起こそうとする場合、議論に参加して意見を出すクリエイティビティな作業とは別に、議事録を残す事務処理に必要な集中力とスピードまでもが同時に求められる、非常にアクロバティックな処理となります。

これら3つの理由から、議事録作成は簡単なように見えて実は難しい作業とされています。しかし、この作業を効率的に行うためのテクニックやツールは存在します。課題を整理し、対策を十分にとることで、議事録作成の負担を軽減しより高品質な議事録を作成することが可能になります。

そこで以下では、会議の課題をTOP10形式で整理し、そのそれぞれについて取りうる対策を検討していきます。

議事録作成の課題TOP10とその解決策

1. 明確性と詳細性のバランス

会議で議論したすべての情報を記録するのは、時間と労力がかかります。とはいえ、重要な詳細を省きすぎれば、議事録として不十分なものになる可能性があります。適切なレベルの取捨選択が必要です。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • テンプレートを用いる: あらかじめ作成されたテンプレートを使って、必要な情報だけを記入するようにする。
  • 議題と目標を明確にする: 事前に会議の議題と目標を明確にし、その情報を中心に議事録を作成する。

2. 時間的制約

議事録は通常、会議中または会議後すぐに作成する必要があります。これは、時間的な制約により困難を伴うことがあります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • 専任の議事録作成者を配置する: 議事録の作成を専門的に行う者を配置し、他の参加者が議論に集中できるようにし、完成した状態で会議終了を迎える。議事録作成者は議論に参加しないことも重要。
  • 高性能録音ツール・音声認識ソフトウェアを活用する: 高性能なボイスレコーダー、ミーティングを自動的に文字起こしする技術を利用する。

3. 主観性の除去

議事録作成者の主観や解釈が記録に影響を及ぼす可能性があります。記録は可能な限り公平で客観的であるべきです。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • 第三者の確認: 議事録作成後、他の参加者に確認してもらい、主観的な解釈や誤解を修正する。
  • 記録者の訓練: 議事録作成者には公平で客観的な記録の作成方法を教育する。

4. 特有の言葉や業界用語の理解

特定の業界や企業には独自の専門用語やジャーゴンがあり、それを理解し適切に記録するためには、作成者がその分野に精通していることが求められます。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • 専門知識を持つ記録者の配置: 業界や分野の専門知識を持つ人物を議事録作成者とする。
  • 専門用語辞典の利用: 業界や企業独自の専門用語をまとめた辞典を用意する。

5. アクションアイテムと責任者の明確化

会議の決定事項として、アクションアイテムや責任者が明確に記載されていないと、その後の進行に混乱が生じることがあります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • 明確なフォーマットを使用する: アクションアイテムを明確に示す特定のフォーマット(例:誰が何をいつまでに行うか)を使用する。
  • 会議の最後にアクションアイテムを確認する: 会議の終わりに全てのアクションアイテムを再度確認し、それを記録に追加する。

6. 重要なポイントの強調

議事録は情報を整理し、特に重要なポイントを強調する役割も果たします。特に参加していなかった者に与える影響に鑑みれば、これらのポイントをどのように強調するかを決めることは課題となります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • 逐語録プラス要約: 逐語録的に議事を書き起こしつつ、マーク、色分け、下線などのビジュアルエイドを用いて重要なポイントを強調する。重要なポイントや結論を強調表示し、それらを会議記録の先頭に要約として置く。
  • 参加者への確認: 重要としたポイントに齟齬がないか、参加者全員から確認することも重要。

7. 配布とアクセス

議事録は関係者全員に適切に配布され、必要に応じて簡単にアクセスできるようにする必要があります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • デジタル化: 議事録をデジタルフォーマットで保存し、関係者全員がオンラインでアクセスできるようにする。
  • 統一したデジタルプラットフォームを使用する: GoogleドキュメントやMicrosoft Teamsなどのデジタルプラットフォームを使用し、全員が同じ場所から議事録にアクセスできるようにする。

8. 記録の保管と管理

議事録は適切に保管され、必要な時にすぐに参照できるようにする必要があります。これは特に長期間にわたり記録を保持する必要がある場合に課題となります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • クラウドストレージの利用: デジタル化された議事録をクラウドストレージに保存し、検索可能で簡単にアクセスできるようにする。
  • 記録管理ツール・ソフトウェアの活用: 議事録の検索・分類・管理を助ける専用のツール・ソフトウェアを使用する。

9. プライバシーと機密性

機密情報やプライバシーに関連する情報が議論される場合、それをどの程度詳細に記録し、どのように保管すべきかは重要な課題となります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • アクセス制御: 機密情報を含む議事録へのアクセスを制限する。
  • 厳格な情報分類: 議事録に含まれる情報を分類し、機密情報は適切に保護する。

10. 言語の問題

多言語での会議では、議事録作成者が全ての言語を理解し、適切に記録する必要があります。これは特に多国籍企業では大きな課題となります。

この課題に対する解決策としては、以下が考えられます。

  • プロの翻訳者や通訳者を雇う: 多言語会議では、適切に議事録を作成できるようにプロの翻訳者や通訳者を使用する。
  • 自動翻訳ツールの利用: 自動翻訳ツールを活用し、基本的な言語の問題を解決する。ただし、これは完全な解決策ではないため、可能であれば人間による確認も必要です。

まとめ—議事録作りが上手くなれば会議の生産性も向上する

議論の流れを意識する

議事録の質を上げるための最初の一歩は、会議の流れを理解しやすくするための議題・時間管理です。

本記事では主に議事録作成者の立場から整理していますが、このポイントについては、会議の主催者・参加者・議事録作成者が一緒になって取り組むべき課題です。

発言者が自分の意見を明瞭に述べる意識をするだけで、議事録作成者は必要な情報を逃さずキャッチしやすくなります。

デジタルツールを活用する

議事録作成の効率を上げるにはデジタルツールの活用が有効です。

高性能なボイスレコーダー、音声認識ソフトウェア、自動書き起こしツールは、議事録作成者が情報を漏らすことなく記録する手助けをしてくれます。さらに、オンラインドキュメント共有ツールは、議事録の編集や共有を簡単にし、参加者からの会議内容の可視性を向上させます。

会議の重要性に鑑みれば、このようなツールに投資を惜しむべきではありません。

重要な情報に焦点を当てる

全ての詳細を記録するよりも、最も重要な情報に焦点を当てることで、議事録作成の時間と労力を節約します。

議事録の中心となる重要な情報とは、

  • 決定事項
  • 具体的なアクション項目
  • 次回の会議までのタスク

など、会議の結論と成果を具体的に示す情報です。そして、これらをはっきりと記載できる議事録を作成しようとすることによって、会議自体の目的意識も必然的に高まります。

議事録作成の課題を克服することで、ビジネスの中心を担う会議の質を向上させレバ、組織全体の生産性を高める大きなチャンスにもなります。適切な準備と工夫、そして最新のテクノロジーを活用し、より生産性の高い会議を実現しましょう。

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