課題解決のためのカイギ術

議事録の作成が苦手な部下の指導方法

議事録は会議の流れや合意事項を正確に記録し、後日参照するための重要な文書です。しかし、全ての部下が議事録作成のスキルを持っているわけではありません。ここでは、議事録作成が苦手な部下を指導する際の心構えを考察します。

 1. はじめに‐議事録の作成が下手な部下を指導する際の心構え

1.1. 議事録の重要性を伝える

議事録作成は、ビジネスの現場でのコミュニケーションを円滑に進めるための不可欠なスキルです。会議での議論や合意事項を文書化し、共有可能な形にする役割を果たします。その重要性は明白であっても、このスキルを身につけていない部下が存在するのも事実です。

以下では、議事録作成の重要性を伝える際に焦点を合わせるべきいくつかのポイントを挙げます。

  • コミュニケーションの質向上:議事録作成スキルは、ビジネスコミュニケーションの質を向上させる基盤を提供します。部下が議事録を通じて議論を明確に表現する技術を習得することで、チーム間の誤解を減らし、より効果的なコミュニケーションを促進することができます。
  • 責任と透明性の確保:議事録は会議の決定事項やアクションプランを記録することで、透明性と責任を確保します。これにより、プロジェクトの進行状況を追跡し、参加者が責任を持って行動することが可能となります。
  • 効率と生産性の向上:議事録は会議の効率と生産性を向上させる重要なツールとなります。部下が議事録作成のスキルを磨くことで、重要な情報の把握と共有が迅速かつ正確に行えるようになり、プロジェクトの遅延や誤解を防止することができます。

これらの議事録の重要性を伝えることで、部下は自身のスキル向上の必要性と、それがチームと企業全体に与える影響を理解することができます。

 1.2. 苦手意識の原因に耳を傾け理解する

議事録作成に対する苦手意識は様々な原因によるものがあります。以下は、部下が抱える可能性のある苦手意識の一例です。

  • リスニングスキルの不足: 会議の進行が速く、話されている内容をすべて理解するのが難しいと感じる。
  • 記録技術の不足: 重要な点を適切に把握し、それを明確に記録する技術に自信がない。
  • 言語表現の難しさ: 議事録の文書化において、適切な言葉・語彙を見つけるのが難しいと感じる。

 1.3. 指導の目的と期待値を伝える

議事録作成の指導は、部下のスキル向上を目的としています。具体的なセリフ調で伝えるべき目的と期待値の例を示します。

“あなたに議事録を作ってもらう目的は、組織のためだけではありません。あなたが議事録作成を通じてコミュニケーションスキルを磨き、チーム内でのコミュニケーションとプロジェクトの進捗に貢献して、あなたのチームメンバーからの信頼を集めることにもあります。”
“効率的な議事録作成スキルを身につけ、チームに有益な情報を提供するハブになれば、これからマネージャーを目指す際の人脈作りにも役立つでしょう”
“私の期待は、あなたがこれからの会議で議事録を作成する中で、重要な点を明確に把握し、それを効率的かつ正確に記録できるようになることです。会議の目的や成果を明確に伝える言葉を選べるようになってもらえると、組織の中でのリーダーシップも自然と身についていくはずです。”

このように目的と期待値を明確に伝えることで、部下は何を学び、何を達成すべきかに焦点を合わせ、効果的にスキルを向上させることが可能となります。

 2. 具体的なトレーニングカリキュラム—基本スキルの磨き方と指導方法

議事録作成能力を向上させるには、リスニングスキル、ノートテイキングスキル、言語表現スキルの3つの基本スキルを磨くことが重要です。これらのスキルは連動しており、一方が他方の効果を高める関係にあります。では、それぞれのスキルを効果的に指導する方法について考察します。

 2.1. リスニングスキル

リスニングスキルは、会議での議論や意見を正確に理解し、記録するための基本となるスキルです。部下がこのスキルを磨くことで、議事録の質を大幅に向上させることができます。

  • アクティブリスニングの練習: アクティブリスニングは、話し手の意図を理解し、重要な情報を把握するための基本技術です。部下には、話し手の言葉を繰り返し、要約する練習を推奨し、フィードバックを提供します。
  • 模擬会議の実施: 模擬会議を実施し、部下に実際の会議環境でリスニングスキルを練習させます。後で議事録を確認し、何が正確に記録され、何が欠けていたのかを検討します。
  • 技術の導入: 例えば、音声記録アプリを使用して、会議の音声を記録し、後で再生しながら手元のメモと比較させるることで、部下が自分の聞き取り力を自己評価する手助けとなります。

2.2. ノートテイキングスキル

ノートテイキングは議事録作成の中核をなす技術であり、重要なポイントを速やかにキャプチャし、整理する能力を含みます。

  • 効果的な記録技術の指導: 例えば、略記法や図解法を導入して、情報を迅速かつ効率的に記録する方法を教えます。
  • テンプレートの使用: 議事録のテンプレートを提供し、重要なポイントをどのように記録し、整理するのかを示します。これにより、部下は情報を効果的に整理し、記録する方法を学びます。
  • フィードバックと改善: 部下のノートテイキングスキルを定期的に確認し、どのエリアが改善される必要があるのかについてフィードバックを提供します。

2.3. 言語表現スキル

言語表現スキルは議事録を明確で理解しやすくするために不可欠です。このスキルは議事録の質だけでなく、部下のプロフェッショナルなコミュニケーション能力全般にも影響を与えます。以下の指導方法で、部下の言語表現スキルを向上させることができます。

  • 明確な言葉の選択:明確で簡潔な言葉を選ぶことの重要性を教え、誤解を避けるための具体的な例を示します。『記者ハンドブック』(https://amzn.asia/d/d146nuh)などを都度参照する癖をつけさせるのも良いでしょう。不要な専門用語を避け、シンプルな言葉を使って意味を明確にする練習も含まれます。
  • 文章構造の理解:良い文章構造とは何か、そしてそれが読者にどのように影響するのかを説明します。実際の議事録の例を使用して、どのように情報を統合し、簡潔に読み手に提示するかを実演します。
  • 校正と編集の練習:部下に自分の議事録を校正させるだけでなく、他の人の議事録を校正する機会を提供します。これにより、文法、構造、そして明確さの観点からどのように改善するか学べます。
  • 語彙力の強化:日常的な業務で必要とされる語彙力を強化するために、日経新聞などのビジネス関連の出版物を定期購読させることも有効です。部下には、わからない単語や表現が出てきた際に、それを調べて個人のノートにまとめるよう指示します。定期的にそのノートをレビューしてフィードバックすれば、部下の語彙力と言語表現スキルは徐々に向上していくでしょう。

3. 効果的なフィードバックの提供

効果的なフィードバックは、部下の議事録作成能力を向上させ、自信を築く基盤となります。適切なフィードバックは、部下が自分の強みと弱点を理解し、継続的に成長していく助けとなります。

3.1. ポジティブなフィードバックの重要性

ポジティブなフィードバックは、部下が進歩を感じ、さらなる努力へのモチベーションを得るために重要です。ポジティブなフィードバックは、部下の努力を認め、成功体験を基にさらなる成長を促します。

  • 励まし: 部下が良い議事録を書いた際には、その努力と成果を明確に認め、励ましの言葉を提供します。他部署からの評判があれば特に励みになります。これにより、部下は自分の能力を確認し、自信を持って次のタスクに取り組むことができます。
  • 具体的な事例: ポジティブなフィードバックを提供する際には、具体的な箇所を挙げることで、部下がどの部分が良かったのか理解しやすくします。これは、部下が同じ成功を再現しやすくする助けとなります。
  • 継続的なサポート: 部下に対して、どのようにしてさらに向上できるのか、そしてどのようにサポートできるのかを明確に伝えることも重要です。

3.2. 構造化されたフィードバックの提供

構造化されたフィードバックは、部下に明確で具体的な改善点と目標を提供し、期待されるパフォーマンスに向けた明確な道筋を示します。

  • 明確な基準: 部下に対する期待値を明確にし、議事録作成の良い例を提供することで、部下は何を目指すべきか理解することができます。
  • 具体的な指示: どのように改善するか、どのように効果的な議事録を作成するかについて具体的な指示を提供します。これは、部下が次のステップを明確に理解する助けとなります。
  • フィードバックのタイムリーな提供: タスクが完了した直後にフィードバックを提供することで、部下は即座に改善点を理解し、修正を加えることができます。

 3.3. 定期的なレビューと進捗確認

継続的な成長と向上のためには、定期的なレビューと進捗確認が欠かせません。

  • 進捗確認のスケジュール作成: 部下の進捗を定期的に確認し、フィードバックを提供するスケジュールを作成します。これにより、部下は自分の進捗を把握し、必要な調整を行うことができます。
  • 明確な目標設定: 短期的および長期的な目標を設定し、その達成度をレビューすることで、部下は自分の成長を明確に把握することができます。
  • オープンなコミュニケーション: 部下とのコミュニケーションチャンネルを常に開いておき、任意の時間に質問やフィードバックを受け付けることができるようにします。これは、部下が必要なサポートを受け、不安や疑問を解消できる環境を作り出します。

 4. 実践と継続的なサポート

部下の議事録作成能力を向上させるには、実際の場での実践と、継続的なサポートが不可欠です。このセクションでは、部下へのリアルタイムでのサポート、実践機会の提供、そして自信と独立性の育成に焦点を当てています。

4.1. リアルタイムでのサポートとフォローアップ

リアルタイムでのサポートは、部下が議事録作成のスキルを現場で磨く際に、即座にフィードバックと指導を受けることができる重要な要素です。

  • 即座のフィードバック: 部下が議事録を作成する際には、その場でフィードバックを提供し、必要に応じて指導します。これにより、部下は何が正しく何が間違っているのかを直接理解し、すぐに改善できます。
  • 状況に応じた指導: それぞれの議事録作成のシナリオは異なります。リアルタイムでのサポートを提供することで、部下は特定の状況に対する最適な対処方法を学べます。
  • フォローアップ: サポートを提供した後は、部下の進捗をフォローアップし、必要に応じてさらなる指導を提供します。

4.2. 議事録作成の実践機会の提供

議事録作成のスキルを向上させるには、実際に議事録を作成する機会が必要です。

  • 実践機会の創出: 日常の会議やプロジェクトミーティングで部下に議事録作成を任せることで、実際の環境での練習機会を提供します。
  • バラエティ豊かなシナリオ: 異なるタイプの会議や異なる規模のプロジェクトで議事録作成を経験させることで、部下は多様な状況に対応する能力を磨けます。
  • フィードバックと再試行: 部下が作成した議事録にフィードバックを提供し、改善点を明らかにした上で、再度議事録作成の機会を提供します。

4.3. 部下の自信と独立性の育成

自信と独立性は、部下が議事録作成スキルを独力で向上させる基盤を築く要素です。

  • 成功体験の共有: 部下の成功体験を積極的に共有し、他のメンバーにもその成功を認識させることで、部下の自信を築きます。
  • 自主性の育成: 議事録作成に関するタスクや目標を明確にし、部下に自分で計画を立てて実行させることで、自主性と責任感を育てます。
  • 独立した学習環境の提供: 部下が自分で議事録作成スキルを磨けるよう、必要なリソースや学習ツールを提供し、独立した学習環境を整えます。

5.利用可能なツールとリソース

議事録作成のスキル向上には適切なツールとリソースが必要です。このセクションでは、サンプル議事録とテンプレート、外部トレーニングとワークショップ、および議事録作成ツールに焦点を当てています。

5.1. サンプル議事録とテンプレート

サンプル議事録とテンプレートは、部下が議事録作成の基本的なフォーマットと構造を理解するのに非常に役立ちます。

  • 標準化されたフォーマット: サンプル議事録やテンプレートを利用することで、部下は議事録の標準化されたフォーマットや必要なセクションを理解し、適切に準備することができます。
  • 実例に基づく学習: 実際に過去の議事録を参照することで、部下は議事録作成の実際の例を見ることができ、それに基づいて自分のスキルを磨くことができます。
  • カスタマイズ可能なテンプレート: さまざまなプロジェクトや会議のタイプに対応するカスタマイズ可能なテンプレートを提供することで、部下は独自のニーズに合わせて議事録を作成するスキルを磨くことができます。

Microsoftなどが、会議議事録を作成するためのテンプレート(https://create.microsoft.com/ja-jp/templates/%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E9%8C%B2)を無償で公開しています。これらを参照させるのも良い学習になります。

5.2. 外部トレーニングとワークショップ

外部の専門家から学ぶことは、部下が新しい知識を獲得し、議事録作成のスキルを向上させる助けとなります。

  • 専門的なトレーニング: 外部の専門的なトレーニングプログラムやワークショップを活用することで、部下は議事録作成の専門知識と技術を獲得することができます。
  • 実践的なワークショップ: 議事録作成の実践的なワークショップを提供することで、部下はリアルタイムでフィードバックを受けながら、実際の議事録作成の経験を積むことができます。
  • ネットワーキングと知識共有: 外部トレーニングやワークショップを通じて、部下は他のプロフェッショナルとネットワーキングし、知識を共有する機会を得ることができます。

マンツーマンで指導してくれる研修講座もありますが、Udemyなどウェブで提供されているe-learning(https://www.udemy.com/course/ejyfpoih/)を受講させてみるのも、一考に値します。

5.3.  会議議事録作成ツール

最新のデジタルテクノロジーを活用した、議事録作成プロセスを簡単かつ効率的にするウェブサービスもあります。

  • 自動化ツール: 議事録作成の自動化ツールは、会議の進行をリアルタイムで記録し、要点を抽出することができます。これにより、部下は議事録作成の時間を大幅に節約し、他の重要なタスクに集中することができます。
  • 会議効率化プラグイン: 会議効率化プラグインを利用することで、部下は議事録の基本的な構造を簡単に作成し、カスタマイズすることができます。
  • コラボレーションツール: オンラインのコラボレーションツールを利用することで、部下は他のメンバーとリアルタイムで議事録を共有し、編集することができます。これにより、チーム全体のコミュニケーションと協力が向上します。

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