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スタンディング・ミーティング導入のすすめ コロプラの事例に学ぶ「立って行う会議」の効用

長時間会議の解消策「スタンディング・ミーティング」について、その定義、起源、メリットとデメリット、導入方法を成功事例とともに解説。本記事をお読みいただくことで、会議効率化プロジェクトの成功イメージができ、導入完了までの具体的な新たなステップの刻み方を理解することができます。

スタンディング・ミーティング導入のすすめ コロプラの事例に学ぶ立ちミーティングの効用

無駄な長時間会議を解消する特効薬「スタンディング・ミーティング」の提案

日本の会議文化の現状と課題

日本のビジネス文化の特徴に、長時間にわたる、終わりの見えない会議があります。これは、コンセンサスを重視する文化や、ヒエラルキーに対する敬意からくるものであると言われます。

必ずしも自己表現に積極的でない日本人の出席者全員に自分の意見を述べてもらうためには、時間が必要です。加えて、会議の目的や目標が明確でない場合も多く、それによって結論が出るまでの時間がさらに長引く傾向にあります。

これらの結果として、日本のビジネスパーソンの多くが会議に時間を取られ、本来の業務に影響を及ぼしています。

非効率な会議の問題点

このような非効率な会議には、いくつかの問題点があります。

まず、他の重要な業務に対する影響が考えられます。会議が多ければ多いほど、本来行うべき業務に取り組む時間が減少します。これにより、個々の生産性や、全体としての組織の生産性に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、意思決定が遅れることで、プロジェクト全体の進行が遅延するリスクもあります。長時間にわたる討論は、しばしば迅速な意思決定を阻害し、その結果、事業の競争力を損ないます。

効率化の必要性とスタンディング・ミーティング導入のすすめ

効率的な会議とは、目的が明確で、参加者がその目的を達成するための議論を行い、必要な意思決定を迅速に行うことができる会議です。

具体的には、以下の要素が求められます。

  • 会議の目的とアジェンダの明確化
  • 適切な人数の参加
  • 時間管理の徹底

これらは、参加者が共通の理解を持ち、必要な情報を効率的に共有し、迅速な意思決定を促すために重要な要素となります。しかし、決定的な解決に繋がらないケースも多いものです。

そこで本記事では、会議の形式そのものを見直した新たな手法として「スタンディング・ミーティング」を導入することを提案します。スタンディング・ミーティングは、その効率性と迅速な意思決定を促す特性から、注目を浴びているためです。

スタンディング・ミーティングとは

スタンディング・ミーティングの定義

スタンディング・ミーティングとは、その名の通り、参加者が立って行う会議のことを指します。

この会議形式は、参加者を物理的にアクティブな状態に保つことで、会議の焦点を絞り、参加者のエネルギーと意識を高めることを目指しています。また、立っていることによって無意識的に時間に対する意識が高まり、会議の長時間化を防ぐ役割も果たします。

スタンディング・ミーティングの起源

スタンディング・ミーティングは、アジャイル開発の手法「スクラム」において日々の作業進捗を共有するために使用されるデイリースクラムから起源を持つとされています。デイリースクラムは、開発チームが毎日立って行う短い会議で、昨日行った作業、今日の予定、問題点や障害要因などを共有します。

現代では、スクラムだけでなく多くのビジネスシーンでもスタンディング・ミーティングが採用されています。特に、情報共有や短期のタスク管理を目的とした会議でその効果を発揮します。リモートワークが一般化した今日では、オンラインでもスタンディング・ミーティングが活用されています。

スタンディング・ミーティングの基本的なルール

スタンディング・ミーティングの基本的なルールは、以下の二つが主に挙げられます。

  • 全員が立った状態で行うこと
  • 時間を限定すること

時間は通常15分から30分と短めに設定されます。これにより、参加者は余計な話を削り、重要な情報だけを短時間で伝えることが求められます。

また、アジェンダは最初に明確にされ、それに沿った議論が行われます。そのため、事前の準備が重要となり、各参加者は会議に臨む前に、何を伝え、何を得るべきかを明確にしておく必要があります。

スタンディング・ミーティングの特性を活かすためには、参加者の意識も重要です。余計な議論を避け、焦点を絞り、時間内に会議の目的を達成することを常に意識することが求められます。

スタンディング・ミーティングのメリット

時間管理の改善

スタンディング・ミーティングは、時間管理の面で大きなメリットを提供します。

立って行うことで自然と時間への意識が高まり、会議の長引きを防ぎます。また、設定された時間内でのみ議論を行うというルールが、議論を効率的に進める力を後押しします。

これにより、ミーティングの時間が短縮され、参加者は他の作業により多くの時間を割くことができます。

参加者間のコミュニケーションの強化

スタンディング・ミーティングでは、一人一人が立つことにより、全員がアクティブに参加し、自分の意見を発言しやすい環境が作られます。また、目的やアジェンダが明確にされ、短時間での情報共有が求められることから、必要な情報のみをダイレクトに伝える能力が鍛えられます。

これは、組織内のコミュニケーションを強化し、チームの協調性や連携を向上させることに寄与します。

決断とアクションへの迅速な移行

ミーティングの短時間化は、参加者に速やかな意思決定と行動への移行を促します。

長時間の討論による決定事項の遅延がなくなることで、プロジェクト全体の進行スピードが向上します。特に、日々の業務進行や問題解決のためのミーティングで、スタンディング・ミーティングのメリットは大きいと言えます。結論を出し、それを実行に移すスピードが速まることは、ビジネスの競争力を高める重要な要素となります。

スタンディング・ミーティングのデメリット

身体的な負担

スタンディング・ミーティングは、物理的な立位により一定の体力を必要とします。

これは、特に体調に問題を抱えている人々や、長時間立ち続けることが困難な高齢者などにとっては大きな問題となり得ます。また、慣れない間は足元の疲れを感じやすく、集中力に影響を及ぼすこともあります。

このような問題を踏まえ、スタンディング・ミーティングを実施する際は、参加者の体調や状況を考慮する必要があります。

深い議論への制限

スタンディング・ミーティングは、その時間制限や形式のため、複雑な問題や深い議論を必要とする議題には必ずしも適していません。

短時間での意思決定が求められるため、必要な詳細の検討や全体像の理解が十分に行えない場合があります。そのため、スタンディング・ミーティングを導入する際には、議題の性質と会議形式が適合するかどうかを考慮する必要があります。

適切な環境の必要性

スタンディング・ミーティングを効果的に行うには、適切な環境が必要です。

たとえば、立って行うには十分なスペースが必要で、それが限られたオフィススペースでは難しい場合があります。また、オンラインでの実施では、参加者が立つことでカメラの視線が適切にならないなど、技術的な問題が生じる可能性もあります。

スタンディング・ミーティング導入によって新しい企業文化が醸成された事例:株式会社コロプラの活用事例

書類不要の「立ちミーティング」 – コロプラ流の新しい会議文化

会議の長時間化という課題からいち早く脱却した先進的企業の事例に学ぶべく、カイギのリ・デザイン編集部は、スタンディング・ミーティング導入で成功体験を持つ企業の一つである、株式会社コロプラを取材しました。

コロプラのオフィスに一歩足を踏み入れると、驚きの光景に出会います。そこには立ったまま打ち合わせを行う姿が至る所に見え、コロプラの「立ちミーティング」文化の一端が伺えます。

彼らがミーティングを行っているスペースにあるのは、一見、通常のテーブルに見えますが、その天板はホワイトボードの役割を果たす特殊なものとなっています。立って話しながらこのボードに自由に書き込むことで、社員たちはアイデアを瞬時に視覚化し、スピーディーな意思決定を可能にしています。各自がノートPCを持ち寄り、デスク備え付けのディスプレイに投影することも可能です。

取締役の原井氏によれば、スマートフォン向けのソーシャルゲーム開発ではスピード感が求められるため、立ちミーティングスペースはそのニーズに適した形で役立っていると言います。企画書や画面仕様書を細かく作り込むことはせず、皆でデスクに集まり、アイデアを描き出し、それをスマホで撮影してすぐに作業に移る。この流れが、彼らの効率的な仕事の進め方を支えています。

コロプラ独自の立ちミーティング専用テーブル
同社採用サイト https://colopl.co.jp/recruit/company/no7.php より

いつでもどこでもフレキシブルに対話がスタート可能

コロプラでは、立ちミーティングスペースがオフィスの至る所に配置されています。これは会議室に頼らずにいつでも気軽にミーティングが可能とするための配慮で、その結果、打ち合わせのための資料の準備や会議室の予約などの手間が省けています。これにより、部門間のやり取りがスムーズになり、即座に決定を下すことが可能です。

同社が恵比寿ガーデンプレイスから東京ミッドタウンに本社を移転した際に、コロプラオリジナルの立ちミーティングスペースは更なる使いやすさを追求して進化を遂げ、抗ウイルス天然素材「リノリウム」を使用した盤面が導入されました。

フラットな企業文化の醸成

コロプラでは、何か気になることがあれば「ちょっといいですか?」と声をかけ、立ちミーティングスペースに移動し、ホワイトボードに書きながら話し合う機会が頻繁に生まれています。これにより、気軽にメンバー同士が対話するフラットな文化が醸成されています。これこそがコロプラのユニークな働き方を形成しており、企業文化として定着しています。

このように、コロプラは、スタンディング・ミーティングを通じて創造的な対話とスピーディな意思決定を実現しています。一見独特な働き方かもしれませんが、その背後にはチーム全体の生産性向上という明確な目的があります。

スタンディング・ミーティングの全面導入とその期待効果

全面導入に向けた具体的なステップ

スタンディング・ミーティングの全面導入は、段階的なアプローチが必要です。まずは、特定の小規模なチームやプロジェクトに対して、スタンディング・ミーティングの形式を試行し、そのフィードバックを収集します。この経験を元に、進行方法や時間の設定、参加者への指導方法などを改善します。

次に、成功した場合は、その実施モデルを他のチームや部署にも広げていきます。最終的には、組織全体の会議形式としてスタンディング・ミーティングを導入し、その結果とフィードバックを定期的に評価し、改善を続けます。

導入後に期待される変化

スタンディング・ミーティングの全面導入により、組織全体の会議の効率と生産性が向上することが期待されます。具体的には、会議の時間短縮により、他の作業に使える時間が増えます。

また、スタンディング・ミーティングが促す積極的なコミュニケーションは、組織内の情報共有や意思決定のスピードを向上させます。さらに、この会議形式は、全員がアクティブに参加することを促進し、個々の意見やアイデアがより多く尊重され、活用される環境を作り出します。

ありうべき問題点とその対策

全面導入にあたっては、いくつかの問題点が考えられます。まず、すべての会議がスタンディング・ミーティングに適しているわけではありません。深い議論や複雑な議題に対しては、従来の座った形式の会議が必要となる場合もあります。

また、身体的な負担や環境の調整など、導入に際して様々な対策が必要です。こうした問題を避けるために、会議の目的や内容に応じて最適な形式を選択し、参加者の状況や意見を考慮した適切な設定と対策を行うことが必要です。

全員が新しい会議形式に慣れるまで、マニュアル・トレーニング・ガイダンスを提供し、定期的なフィードバックと改善を続けることが重要です。

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