議事録の保護のベストプラクティス 電子ファイルで作成した議事録の保存方法
御社の議事録の安全性は確保されていますか?電子ファイルでの議事録の作成・保存に潜むリスクから、最新の保護手段と実例を網羅的に紹介し、議事録保存におけるセキュリティ対策の重要性を解説します。
目次
御社の議事録は安全ですか? – 電子ファイルで作成・保存する議事録が抱える問題
議事録は、ビジネスや組織運営において不可欠な文書です。しかし、この重要な情報は本当に安全に保護されているでしょうか?
手書きやタイプライターの時代は去り、コンピュータを使い電子ファイルで議事録を作成・保存することが一般的になりました。BOXILによるグループウェアの市場シェア調査でもMicrosoft Office が広く利用されていることからも分かる通り、MS Word で議事録を作成し、サーバー上の共有フォルダに保存することが一般的です。
しかし、こうして作成されたデジタル議事録がどれほど安全に管理されているかは、普段あまり意識されていません。
MS Wordファイルでの作成とそのリスク
コンピュータに搭載されたMS Wordは、全世界で最も広く使われている文書作成ソフトウェアですが、それは、多くの人々が簡単にWordファイルにアクセスできるツールを所有していることも意味します。
同じソフトウェアを動かすコンピュータ同士がインターネットで接続された現代では、議事録に不適切なアクセスが発生するリスクは、紙とペンで議事録を作成していた時代とは比較にならないほど高まっています。
もちろん、Wordファイルにパスワードを設定することは可能です。とはいえ、メールに電子ファイルを添付する場面でもなければ、普段はパスワードを設定しないのではないでしょうか。まして、議事録を保存する際にパスワードを設定して保存することは稀でしょう。パスワードを設定してしまうと、ファイルを開いたり内容を検索する際に手間がかかることも、その理由の一つです。
デジタル化時代の新たな課題
さらに、パスワードを設定したとしても防げないリスクも存在します。例えば、ファイルが破損したり、誤って削除されたりする可能性があります。ハッキング技術の進歩やシステムの脆弱性により、不適切なアクセスが行われる可能性もあります。
リモートワークや分散チームが普及する中で、共有する電子ファイルが増え、その一方で、その情報をいつでもどこからでもアクセスできるようにしておく必要性も高まっています。どれが最新の・本当の情報が記載された原本ファイルかをわかるようにしておくことも重要です。複数の場所やデバイスでファイルが利用される現代では、情報の一元管理がよりシビアに求められます。
以上のような課題があるため、議事録の保護という課題は以前よりも重要性を増しています。次のセクションでは、議事録を保護する理由とその方法について詳しく解説します。
議事録保護の重要性とその理由
議事録には、企業の戦略、製品の詳細、人事に関する情報、法規制に関する重要な決定など、組織の運営に直結する情報が含まれています。そのため保護は極めて重要です。ここでは、議事録を保護する理由について整理をしてみましょう。
機密性の確保
議事録は重要な経営決定事項、営業秘密、個人のプライバシーといったセンシティブな情報をしばしば含むため、その機密性を維持することが重要です。これは不正なアクセスやデータ漏洩から議事録を守ることを意味します。
完全性の確保
情報の完全性は、情報が正確であり、不正操作や偶発的な変更から保護されていることを意味します。情報の完全性が損なわれると、誤解や混乱を引き起こし、組織の運営に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、情報の完全性を保つことが必要です。
可用性の確保
情報は、必要なときに適切な人々がアクセスできるようにする必要があります。これは、情報が適切に保存され、予期せぬ状況(例えば、システムの障害や自然災害など)でもアクセス可能であることを保証することを含みます。
法規制への対応
法規制により、議事録は一定期間保存することが義務付けられています。例えば、日本の会社法では、重要な経営の決定事項に関する議事録は作成後10年間保存することが求められます。また、税務関係の決定事項に関わる議事録があれば、電子帳簿保存法などの要請により、7年以上の保存が求められることもあります。
知的財産の保護
議事録は組織の知的財産の一部を形成します。ビジネス戦略や製品開発に関する情報、企業文化や業務フローに関する知識など、これらの情報は競争力を保つために重要です。特許権の正当性を主張する際などに、その発明がいつ・誰によって生まれたかを議事録によって証明する必要があるケースもあります。
議事録保護手段にはどのようなものがあるか
議事録の保護には多くの手段があります。これらはテクノロジーの進歩により、日々進化しています。以下に、議事録保護手段について解説します。
物理メディアによる保護
古くから利用されている保護手段の一つに、物理メディアによる保護があります。これは、議事録をUSBメモリや外付けハードドライブなどに保存し、物理的に保存するというものです。これにより、データ漏洩やハッキングから議事録を保護することができます。ただし、これらのデバイスが故障するか、紛失すると、情報を回復することは困難です。そのため、他の保護手段と組み合わせることが推奨されます。
パスワードによるアクセス制御
パスワードによるアクセス制御は、データ保護の基本的な手段の一つです。しかし、パスワードは適切に管理され、定期的に更新される必要があります。また、パスワード自体が強力であることが重要です。弱いパスワードを設定したりパスワード共有をしたりしてしまうと、データ漏洩のリスクをかえって高めます。
データ暗号化(電子署名を含む)の利用
データ暗号化は、議事録の保護に非常に有効な手段です。これは、情報を特殊なコードに変換し、正当なキーを持つユーザーのみが読み取ることができるようにするものです。これにより、不正アクセスやデータ漏洩が発生しても、情報が読み取られるリスクを大幅に減らすことができます。議事録に電子署名を付与するのも、暗号化技術を応用したデータ保護手段の一つです。
クラウドストレージの活用
クラウドストレージは、議事録を安全に保存し、適切な人々がいつでもどこでもアクセスできるようにする手段です。クラウドストレージプロバイダは、データセンターにおける物理的なセキュリティ対策やデータ暗号化、データバックアップなど、高度な保護機能を提供します。最も現代的な議事録保護手段と言って良いでしょう。
2要素認証との組合せ
2要素認証(2FA)は、ユーザーの身元を確認するために二つの異なる方法を組み合わせて使用する認証手法です。これは通常、パスワードと、携帯電話に送られる一時的なコードなど、二つの「要素」からなります。2FAは、単純なパスワード認証よりも遥かに強力な保護を提供し、不正アクセスから議事録を守ることができます。
電子ファイルで作成・保存する議事録保護のベストプラクティス
議事録の保護におけるベストプラクティスは、ただ技術的な解決策を適用するだけではなく、組織全体で取り組むべき重要なプロセスです。以下に、議事録保護のためのベストプラクティスを順を追って紹介します。
セキュリティポリシーとガイドラインの策定
セキュリティポリシーとガイドラインを明確に策定することは、議事録保護の最初のステップです。セキュリティポリシーでは、データの管理、アクセス制御、バックアップ、リカバリープロセスなど、重要なセキュリティ事項を定義します。また、これらのポリシーを全従業員に周知するために、より実務的でわかりやすいガイドラインを策定しておくことも重要です。
情報セキュリティポリシーの策定にあたっては、総務省「国民のための情報セキュリティサイト」などを参考にすると良いでしょう。
従業員向けのセキュリティトレーニング
従業員自身がセキュリティについて理解し、適切な行動をとれるようにトレーニングを徹底します。セキュリティトレーニングは、従業員が日々の業務でセキュリティリスクを理解し、それに対応するための手段を学ぶ機会を提供します。トレーニングでは、パスワードの管理、フィッシング詐欺の識別、安全なデータ共有の方法など、具体的なスキルを教授します。不定期にサイバー防災訓練を実施することも一考に値します。
民間企業の実例では、freee株式会社が毎年10月末に障害訓練の日を定めて訓練していることで有名です。
情報保護手段選定の基準と評価
適切な情報保護手段を選ぶために、その効果とコスト、適用可能性を評価する基準が必要です。それぞれの手段が提供する保護レベル、必要なリソース、導入の困難度などについて最新情報を常に収集することで、最適な選択を行うことができます。
例えば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンターでは、「ネット接続製品の安全な選定・利用ガイド」を公開しています。
定期的なセキュリティ対策の見直しと更新
セキュリティは一度設定すればよいものではありません。新たな脅威が常に出現するため、定期的な見直しと更新が必要です。セキュリティポリシー、ガイドライン、トレーニング、保護手段など、全ての要素を定期的にレビューし、必要に応じて改善することで、議事録保護を最適な状態に保つことができます。