課題解決のためのカイギ術

会議の効率化のための5つの基本ルール

会議はチームで意見交換や意思決定を行う重要な場ですが、しばしば効率が悪く、時間の無駄になることも少なくありません。この記事では、会議を効率的に進行するための5つの基本ルールを紹介します。アジェンダの作成、時間管理、議論のフォーカスなどの方法論やノウハウを学ぶことで、より生産的な会議を実現しましょう。

会議の効率化のための5つの基本ルール

1. 議題(アジェンダ)の作成と共有

議題(アジェンダ)とは、会議で討議される内容の題目・見出しです。会議の主催者が議題を作成し共有することで、参加者に会議の目的を伝達し、参加者がそれぞれの議題について事前に準備する機会を提供し、会議進行に追従しやすくします​。

1.1 目的に沿った議題の選定

会議の主催者が議題を選択し参加者に提示するに当たっては、会議終了時に到達していたいゴールにどう向かうのか、その道筋が見えるものであることが重要です。

では、参加者にとってゴールに到達する道筋が見えやすくする議題とするために、どのように議題を整理すればよいでしょうか?そのためのコツとして、会議のテーマごとに議題を以下の3つのカテゴリーに細分化しておくとよいでしょう。

  1. 前提情報の提供
  2. ディスカッション
  3. アクションアイテム

1.2 優先順位付けと時間割り振り

主催者は、議題の重要度に応じて優先順位を付け、各議題に十分な時間を割り当てます。

あるテーマについて初めて討議する場合には、議論の前提情報の提供に時間を割く必要があり、議題への割り当て時間も増える傾向にあります。ディスカッションが重ねられ成熟したテーマであれば、効率的に議論を進行させ具体的なアクションアイテムを割り付けることに時間を割くべきです。

予定時間をオーバーしないようにするために、時間割り振りにはバッファを含めることも重要です​。

1.3 参加者への事前共有と資料の準備

会議の議題は、可能な限り早く共有します。具体的には、最低限会議前日の営業時間中に共有を済ませておくべきでしょう。関連資料があれば、前に添付ファイルやクラウドストレージへのリンクを共有します。

些細なことのようですが、その際には各議題に対して発表者を具体的に指定しておくことも、当日の会議進行の効率化に役立ちます。発表者となることを自覚すれば必然的に資料等の準備をもれなく尽くそうというモチベーションが湧きますし、関係者が複数人いる場合にありがちな「お見合い」状態の発生も避けられます。

2. 時間管理の徹底

会議の時間管理は、効率的で生産的な会議を進行する上で重要な要素です。以下に、時間管理を徹底するためのいくつかの方法を提案します。

2.1 会議の開始と終了時刻の厳守

会議の開始と終了時刻を具体的に示し、それを厳守させることは、多数の参加者を巻き込む会議において守らなければならない基本ルールです。

主催者は、参加者全員が会議の開始と終了時刻を明確に理解していることを確認します。

2.2 各議題の時間制限と進行役の役割

会議の主催者や進行役は、会議を定刻に始め、定刻に終わらせることについて責任を負います。

その責任を果たせるようにするためには、時間厳守のために議題の順番や議事の進行を臨機応変に変更したり、参加者の発言を打ち切る等の広い権限権限が、主催者や進行役に保証されていることが重要です。

2.3 時間外の議論の取り扱い

望ましい事態ではありませんが、会議の時間内に解決できない議論については、以下のような代替手段により、会議の時間外で取り扱うことも必要となります。

  • 別の会議を設ける
  • メールやチャットで討議を行う
  • 個別に話し合う

会議の時間を最大限に活用しながらも、時間内で議論がまとまらなかった場合には、このような手段により必要な決定がビジネス上の期限内に行われることを確保します。

3. 議論のフォーカスと進行

参加者にとって時間は有限かつ貴重なリソースです。さらに、競合と争うビジネスの世界では、1日も早く結論を出し行動をした者が先行者利益を得ることになります。会議の時間を無駄にしないよう、結論に向かって議論を進行させるためのテクニックについて、整理してみましょう。

3.1 議題に沿った議論の維持

上記1.1で述べたとおり、会議のテーマごとに議題を3つのカテゴリー(前提情報の提供、ディスカッション、アクションアイテム)に細分化しておくと、議論の道筋が逸れないように維持しやすくなります。

情報提供の場面では、その会議の参加者が前提として知っておくべき知識を提供します。この場面では、会議のテーマに関する議論そのものは行わず、その情報がどの程度信頼できるものかを、お互いに確認するにとどめます。

その後、その知識を前提としたディスカッションを行うようにします。事前に参加者の間で前提となる知識が統一されていることで、Yes・No/Go・No Goの結論を出すことに集中ができます。

ディスカッションにより意思決定ができたら、その意思を実現するためのアクションアイテムを5W1Hに沿って洗い出し、責任者をそれぞれ割り付けていきます。

3.2 オフトピックな不規則発言への適切な対処

多数の参加者がいる会議では、どうしても議題とは直接関係のないオフトピックな不規則発言がつきものです。

会議の時間を厳守することに権限と責任を持つファシリテーターとしては、権限によりそうした不規則発言を全て無視したりシャットアウトしたりしてしまうことも可能です。一方で、そうした発言が会議自体の雰囲気をよくしたり、参加者の意欲や興味を高めることがあるのも現実です。

このようなケースでは、「パーキングエリア」と呼ばれるテクニックが有用です。ファシリテーターは、そうしたオフトピックな不規則発言が会議の流れを決定づける前に、あえて積極的に取り上げ、ホワイトボードや議事録の片隅(パーキングエリア)にメモをしておきます。そうすることで、発言者の意図や発言の内容自体は否定せずに、しかし参加者には「この発言は今回の議題とは関係ない」ことを示すわけです。

このように対処することで、議論が道筋から逸れたり、会議時間を浪費してしまうことを防ぐことができます。パーキングエリアに入れた話題が価値の高いものであれば、それを議論するのに必要な参加者を対象に、別途会議を設定すればよいでしょう。

3.3 結論とアクションアイテムの明確化するための議事録の作成

生産性の高い会議とは、会議終了後に何が期待されているか、誰が何をすべきかが明確となっている会議のことです。そのためには、

  • ディスカッションの結論
  • アクションアイテムとその実行責任者・期限

の2つを明確にすることが非常に重要です。この2つを記録したものが、「議事録」となります。

議事録の作成は、会議の進行と同時並行で行うことが求められます。すなわち、議題の各項目に対してファシリテーターを指定し、ファシリテーターが会議中にメモを取り、アクションアイテムを追跡します。会議の終了時にこれが言語化でき議事録として残せていなければ、会議は失敗したと言っても過言ではありません。

なお議事録の作成にあたり、結論に至るまでの議論のプロセスについて、必要以上に詳しく記録しようとする方がいます。しかし、後にプロセスを議事録を遡ってまで事細かに確認しようとする人がどのくらいの人数・頻度で発生するかを想像すると、そのようなプロセスの記載がほとんど役に立たないことに気づきます。ビジネスを前に進めるために必要なのはプロセスの記録ではなく、結論とアクションアイテムをクリアにしておくことこそが重要です。

例外として、会議で最終的に到達した結論に対し、反対意見があったことを記しておくべき議事録として、取締役会議事録があります。後に取締役の善管注意義務等が問われた際に、記録の有無が責任に影響を与えるケースがあるためです。

4. 参加者のエンゲージメント促進

エンゲージメントとは、会議における参加者の関与度や参加意欲、活発さを指す概念です。高いエンゲージメントを持つ参加者は、積極的に話し合いに参加し、意見を共有し、問題解決や意思決定のプロセスに貢献します。一方、エンゲージメントの低い参加者は、会議の流れについていけず、自分の意見を表現することに消極的になります。

4.1 発言機会の平等化

会議の運営者として、参加者全員に発言の機会を平等に提供することは、エンゲージメント向上のために重要です。

これを達成するために誰でも導入できるかんたんなテクニックの一つが、初回会議の冒頭で、参加者に自己紹介や立場の表明を求めることです。参加者が互いについて知ることができれば、その後の発言しやすい雰囲気を作り出すことができます。

また、会議の主催者として、発言が偏らないよう、参加者に発言を促すことも重要です。特に、積極的な発言者がいる場合、その発言者がダラダラと発言を続けないよう遮り、「他にどなたか意見がある人はいますか?」と議場に問いかけて消極的な発言者にチャンスを与えるのも、細かいですが有用なテクニックです。

4.2 効果的な質問や意見交換の促進

効果的な質問は会議における重要なコミュニケーションの一部です。会議の中で意見や情報を共有する際には、それが具体的で明確であることを確認し、必要な場合には質問を行いましょう。

他の参加者が発言した内容に対して疑問や質問がある場合には、それを聞くことによっても参加者間の理解や議論を深めることができます。発言が終わった後には、自分の発言が他の参加者に理解されたか確認するために、反応を見ることも重要です

4.3 非言語コミュニケーションの活用

音声言語を通じた聴覚要素に加え、視覚的な要素を活用することで、参加者同士の理解を深め、議論をより具体的で明確にすることができます。

非言語コミュニケーションは、会議の中では非常に重要な役割を果たします。これには、

  • 身振り
  • 目の動き
  • 表情
  • 声の調子

などが含まれます。これらの要素は、話された言葉だけでは伝えきれない情報を補完する役割を果たします。

オンライン会議においては、カメラをオンにすることでこれらの非言語コミュニケーションを活用することが可能となります。企業が人件費をかけて行う業務上必要な会議である以上、ファシリテーターは、カメラをオフにしたままの参加者に対し、差し迫った事情のない限りはオンにするよう働きかけるべきでしょう。

また、ビジュアルを活用する工夫も求められます。議論の過程で生じたアイデアや意見を可視化するために、ホワイトボードを活用してイメージを視覚化するのは、会議成功に向けての常套手段の一つです。

5. 会議後のフォローアップ実施

会議が終了したら、その結果を最大化するために、適切なフォローアップが必要です。これにはアクションアイテムの整理と共有、進捗管理と定期的な評価、そしてフィードバックの活用と改善点の洗い出しが含まれます。

5.1 アクションアイテムの整理と共有

会議が終わった直後にアクションアイテムを整理し、会議参加者全員と共有することは非常に重要です。それぞれのアクションアイテムには明確な期日と担当者を設定し、誰が何をするべきか明確にします。これにより、全員が会議での決定事項に対する責任を明確に理解し、その実行に向けた次のステップを確認することができます。

5.2 進捗管理と定期的な評価

アクションアイテムが割り当てられたら、次はその進捗を管理し、定期的に評価することが重要です。これには、各アクションアイテムのステータスを更新し、任意のボトルネックや遅延を特定することが含まれます。

定期的な評価により、各タスクが全体の目標にどのように寄与しているかを確認し、必要に応じて優先順位の再評価や戦略の調整を行うことができます。進捗状況が共有され、問題が早期に対処されることで、プロジェクトの成功確率が高まります

5.3 フィードバックの活用と改善点の洗い出し

最後に、フィードバックの活用と改善点の洗い出しも、効果的なフォローアップの一部です。会議の参加者からフィードバックを求め、それを次回の会議の改善に生かすことで、会議の品質を向上させることができます。

フィードバックは、

  • 会議の内容
  • 方法と形式
  • 持ち時間
  • 参加者の貢献度・効力感

など、会議のあらゆる側面に関するものであるべきです。具体的な改善点を洗い出すために、フィードバックを詳細に分析し、それを基に次回以降の会議の運営方法を改善します。

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